共同プレスリリース
エボニックとシーメンスエナジー、地球環境に優しい二酸化炭素と水素を原料とするサステイナブルな化学品製造プロセスを確立
エボニック インダストリーズ(本社:ドイツ、エッセン)とシーメンスエナジー(本社:ドイツ、ベルリンおよびミュンヘン)は、9月21日、二酸化炭素(CO2)と水からスペシャルティケミカルを製造するテストプラントの稼働を開始しました。
本プラントの必要なエネルギーは、再生可能資源から作られた電力を使用します。ドイツ・ルール地方北部のマールから人工光合成という革新的な技術を利用し、エネルギー革命を成功に導くことが期待されています。本プロジェクト「レティクス(Rheticus)IおよびII」は、ドイツ連邦教育研究省(BMBF)から総額630万ユーロの助成を受けています。
BMBF アンジャ・カルリチェク(Anja Karliczek)大臣は、テストプラントのオープニングセレモニーで次のように述べました。「マールで最高水準の新たなテストプラントが始動したことを喜ばしく思います。レティクスプロジェクトを通じ、化学産業で環境に優しい製造プロセスを確立すると共に、革新的な製品が作られます。この方法は、ドイツだけではなく、世界中で実現できる可能性があり、技術輸出を行う絶好のチャンスとなります。私たちは、効果的な地球環境保護を推進しながらドイツの強力な産業基盤を維持していきたいと考えており、その両方をこのプロジェクトは実現できると確信しています。BMBFは、この目標実現に向け、総額630万ユーロを投資し、すべての関係者の成功を祈っています。」
ドイツ連邦議会議員 グリーン水素担当の連邦委員も務めるシュテファン・カウフマン(Stefan Kaufmann)は、「スペシャルティケミカルの製造を行うレティクスのテストプラントが稼働を始めたことは、まさに時代の先駆となる偉業と言えるでしょう。結局のところ、グリーン水素経済は、イノベーション大国ドイツで革新的な技術が使われた場合にのみ成功するでしょう。そのためには勇気と研究精神が欠かせず、レティクスのプロジェクトパートナーは、これを示す模範的な存在です」と述べています。
エボニック取締役会副会長 イノベーション担当責任者 ハラルド・シュヴァーガー(Harald Schwager)は、「エネルギー転換に関するソリューションや開発に取り組んでいる化学産業なくして、地球環境保護は不可能です。レティクスのような研究プロジェクトは、サステイナブルな社会実現へのモチベーションや技術革新の原動力となります」と述べています。さらに「政治的決定における供給の安定性と信頼が新しいものを生む出すフレームワークを設定します」とコメントし、化石燃料の段階的廃止に関するスピードについて、警鐘を鳴らしています。
シーメンスエナジーCEO クリスチャン・ブルッフ(Christian Bruch)は、「私たちの目標は、革新的な技術を使い、よりサステイナブルな新しいソリューションを可能にすることです。CO2と水を電気分解することで、グリーン電力からサステイナブルな素材への応用へとつなげていきます。政治、科学、そしてエボニックに代表されるビジネスパートナーと緊密な協力を行うことで、この目標達成への重要な一歩を踏み出すことができます」とコメントしています。レティクス研究プロジェクトは、コペルニクス・プロジェクトという、ドイツ連邦政府が手掛けるエネルギーシステム転換に関する最大規模の研究プログラムから派生したものです。レティクスは、Power-to-Xという概念の実用化を成功させる方法を実証します。
レティクスの実験施設の背景にある人工光合成の概念について、研究者たちは自然界の光合成をモデルにしました。植物が太陽エネルギーを利用し、CO2と水からいくつかのステップを経て糖類を生成するように、人工光合成は再生可能エネルギーを使いCO2と水を電気分解し、さらにバクテリアを利用して貴重な化学物質を生成します。このような人工光合成は、エネルギー貯蔵庫としての役割を果たすため、炭素循環を実現し、大気中の二酸化炭素汚染を低減するのに役立ちます。
エボニックの最大拠点であるマールで稼働を始めたテストプラントは、シーメンスエナジーが開発したCO2と水から一酸化炭素と水素を生成する電気分解装置とエボニックのノウハウを用いたバイオリアクターで構成されています。電気分解装置では、第一段階として電気を利用してCO2と水を一酸化炭素(CO)と水素(H2)に変換します。この合成ガスを原料として特殊な微生物を利用し、まず研究目的でスペシャルティケミカルの製造を行います。そして、これらのスペシャルティケミカルが、例えば、スペシャルティ・プラスチックや栄養補助食品などの出発物質になります。
今後数週間で、合成ガスの組成、電気分解と発酵の相互作用の最適化が行われます。さらに、純度の高い化学品を得るためにバイオリアクターから液体を処理するユニットが設置されます。
レティクスプロジェクトの現段階(Rheticus II)が成功裏に終了すれば、エボニックとシーメンスエナジーは、二酸化炭素からからスペシャルティケミカルや人工燃料のような高エネルギーで価値の高い物質をモジュール方式で柔軟に生成できる独自のプラットフォーム技術を実現することができます。
(本プレスリリースは、2020年9月21日にドイツで発表されたものを翻訳しています。)
シーメンスエナジーについて
シーメンス・ガス・アンド・パワー社(Siemens Gas and Power GmbH & Co. KG)は、シーメンスグループがグローバルな展開を行うエネルギー事業で、150年以上にわたり、産業と社会の進化する要望へのソリューションに対してお客様とともに取り組んできました。 シーメンスのエネルギー事業は、今後、株式上場を行い、シーメンスエナジーとして独立した運営が行われる予定です。電気・ガス・水道などの公共事業、独立系電力事業者、送電システム事業者、石油・ガス産業、その他のエネルギー集約型産業向けの包括的なポートフォリオに沿い、エネルギーのバリューチェーン全体にわたって、幅広い専門知識を提供していきます。シーメンスエナジーは、製品、ソリューション、システム、サービスの提供を通して、石油・ガスの抽出、処理、輸送、中央・分散型火力発電所での発電・熱供給、エネルギー転換用の送電・技術(蓄電やセクター結合ソリューションを含む)に取り組んでいきます。シーメンスガメサ・リニューアブル・エナジー(Siemens Gamesa Renewable Energy)の過半数の株式取得をもって、シーメンスエナジーの未来志向のポートフォリオは完成します。シーメンスエナジーは世界のエネルギーシステムの脱炭素化をリードすることを約束し、企業、政府、顧客がよりサステイナブルな未来への道を歩んでいく上で、最適なパートナーになります。全世界で約90,000人の従業員を擁するシーメンスエナジーは、今日そして明日のエネルギーシステムの形成をサポートしていきます。
Power-to-X分野におけるドイツ連邦教育研究省(BMBF)の活動について
2019年、BMBFはエネルギー研究の支援として、5億ユーロを上回る資金提供を行いました。Power-to-X技術は、BMBFのエネルギー研究において中核を成しています。ここで中心的要素となるのがBMBFのコペルニクス・プロジェクト「P2X(パワー・トゥー・エックス)」で、そこからレティクスプロジェクトが派生しました。「P2X」プロジェクトでは、グリーン水素の生産と輸送(パワー・トゥ・ガス)、水素補給ステーションの使用、暖房(パワー・トゥ・ヒート)、化学品(パワー・トゥ・ケミカルズ)、プラスチック製造(パワー・トゥ・プラスティックス)に関する調査が実施されています。また、「P2X」は合成ガス(パワー・トゥ・リキッド)を利用した合成燃料や地球環境に優しい燃料の生産も行われています。つまり、P2Xでは付加価値チェーンにおいて、実際に二酸化炭素が原料として利用されています。さらに「Carbon2Chem」プロジェクトでは、鉄鋼製造時に発生し地球環境に悪影響を与える排ガスを原料として利用するプロセスの開発が行われており、最終的に、肥料、プラスチック、燃料の前駆物質を製品として生産することを目指しています。この過程でさらに水素が必要となるため、コンソーシアムでは電解装置を稼働させています。上記プロジェクトは、Power-to-X技術に関してBMBFが資金提供を行う活動のわずか二例にすぎません。
エボニック インダストリーズについて
エボニックは、100ヵ国以上で事業を展開するスペシャルティケミカルの世界的リーダーの1つです。2019年度は、131億ユーロの売上、21.5億ユーロの営業利益(調整後EBITDA)を計上しました。革新的で収益性の高い持続可能なソリューションをお客様に提案するために、私たちは化学のその先を目指します。「毎日の暮らしを豊かに」という同じ目的のもと、32,000人以上の社員が働いています。
アジア・パシフィック・リージョンについて
エボニックは、世界経済を牽引し、イノベーションの宝庫であるアジア・パシフィック・リージョンで更なるビジネスの成長を目指しています。2019年度は、28.7億ユーロの売上を計上し、50以上の製造拠点で5,000人以上の社員が働いています。
免責事項
このプレスリリースに記載されている見通しや期待、または将来の予測に関する記述は、既知または未知のリスクと不確実性を含む可能性があります。実際の結果や発展は事業環境の変化により異なる場合があります。エボニック インダストリーズ AGはこのリリースに含まれる見通し、期待、記述に関して、更新の義務を負いません。