エボニック、新世代の電気自動車用バッテリーパックをベスタロ・コンソーシアムパートナーと開発
エボニック インダストリーズ(本社:ドイツ、エッセン)は、自動車用複合材料設計の企業コンソーシアム・ベスタロを構成するメンバーの一員として、新世代のバッテリーパック「ピュア・パフォーマンス・バッテリー」(PPB)を開発しました。エボニックの硬化剤を使用して製造された新しいコンセプトのバッテリーシステムは、金属やCFRPに代わる安全、軽量、コスト効果の高いソリューションを自動車業界に提供します。
- 高電圧バッテリー用ハウジングにシートモールディングコンパウンド(SMC)を使用したアプローチ
- 車両と半一体化した構造により、あらゆる車種の省エネ性と安全性の要求を満たす
- エボニックの複合材料分野における知見を活かすことで、高性能で急速充電可能なバッテリーシステムをリーズナブルなコストで実現
2019年末に結成されたベスタロは、まずエボニックのエポキシ硬化剤VESTALITE® Sをベースに、コスト効率の高い新しいグラスファイバーSMC(GF-SMC)のカバーを開発しました。これは高コストの材料で作られた同等性能のカバーと比較し、バッテリーハウジングの約10%軽量化を実現します。また、高性能のSMC材料は金属筐体と同等の性能を保ちながら、車両との統合に必要な設計自由度を追求することができます。
2021年初め、パートナー企業であるロレンツ・クンストシュトフテクニック社(Lorenz Kunststofftechnik)が製造したベスタロの新しいGF-SMCカバーの成功が発表されました。それに続き、ティア1自動車部品メーカーのミンス社(Minth GmbH)が加わり、コンソーシアムはさらに強化されました。ミンス社のアルミニウムソリューションに関する深いノウハウが加わったことで、現在のバッテリーパックに関する2つの大きな課題である耐底面衝撃性の向上と車両との統合に取り組むことができました。
側面及び底面への耐衝撃性能に対するOEMの厳しい要求に応えるため、コンソーシアムでは、底面構造をミンス社が開発したアルミニウム製サンドイッチプレートに変更しています。
この変更は、耐底面衝撃性能を高めるだけでなく、余分な側面の変形要素を減らしたため、空いたスペースをバッテリーセルに使用することができるようになりました。さらに、耐底面衝撃性能の向上により、モジュール搭載に必要なスペースも縮小することができました。これらの要因からコンソーシアムが以前製造していた製品と比較し、バッテリーパックの外寸はほぼ同じままで、全体の容量を65kWhから75kWhと、10kWh向上させることが出来ました。
エボニックの複合材料および接着剤のマーケティング責任者セバスチャン・デ・ナルド(Sebastian de Nardo)は、「当社の新しいバッテリーパックは性能を重視して設計されています。エボニックのVESTALITE®硬化剤の優れた性能により、独自のエポキシSMCカバーの耐火性および衝突挙動の面で優れた性能と安全性を実現することが可能になりました。また、エボニックの幅広いマテリアルツールボックスと専門知識を駆使し、グラスファイバー・コンポジット材のEMIシールディング性能に関するあらゆる懸念を克服することに成功しています。その結果、お客様の個別要件に合わせてピュア・パフォーマンス・バッテリー性能を調整することができるようになりました」と述べています。
フォワードエンジニアリング社(Forward Engineering)独自のBEVフロア構造開発ツールを用いて設計・検証されたこの新しいバッテリーは、長さ約2.1メートル、幅約1.58メートル、最大高さ0.15~0.22メートル(ペントハウス構造)で、様々な車両構造に適しています。また、モジュール数を柔軟に調整でき、複雑な形状をひとつの工程で製造できるため、バッテリー性能を各地域の要件に合わせることができます。
スーパーセルのコンセプトは、ライオン・スマート社(LION Smart)のライトバッテリーをベースとしており、計算上、常に200kW以上の電力で約13分の急速充電が可能です(充電状態10%~80%)。
自動車業界では、車両部品のサステナビリティの向上も重要なテーマであるため、新しいカバーは、バッテリーモジュールや周辺機器に素早くアクセスできるように、簡単に取り外せるように設計されています。さらに、カバー自体はロレンツ・クンストシュトフテクニック社独自のリサイクルプロセスにより再生可能で、新たな複合部品に再利用することができます。
GF-SMCカバーおよび新しい高性能ピュア・パフォーマンス・バッテリーのコンセプトに関する詳しい情報は、https://crosslinkers.evonik.com/en/products/vestaliteでご覧いただけます。
(本プレスリリースは、2022年3月8日にドイツで発表されたものを翻訳しています。)
エボニック インダストリーズについて
エボニックは、100ヵ国以上で事業を展開するスペシャルティケミカルの世界的リーダーの1つです。2021年度は、150億ユーロの売上、23.8億ユーロの営業利益(調整後EBITDA)を計上しました。 革新的で収益性の高い持続可能なソリューションをお客様に提案するために、私たちは化学のその先を目指します。「毎日の暮らしを豊かに」という同じ目的のもと、33,000人以上の社員が働いています。
アジア・パシフィック・リージョンについて
エボニックは、世界経済を牽引し、イノベーションの宝庫であるアジア・パシフィック・リージョンで更なるビジネスの成長を目指しています。2020年度は、28.4億ユーロの売上を計上し、50以上の製造拠点で5,000人以上の社員が働いています。
クロスリンカー部について
クロスリンカーは、コーティングおよび接着剤、および高性能エラストマーおよび複合材料のための幅広い製品を提供しています。イソホロン化学に基づく製品のほかに、ポートフォリオには、熱硬化アプリケーションのためのアミン硬化剤が含まれています。製品は、主に機械的強度、耐久性、耐薬品性、優れた接着特性により、産業用途に使用されています。www.evonik.com/crosslinkers
参考情報:
VESTARO GmbHについて
エンジニアリングとスペシャルティケミカルの専門知識を束ね、VESTAROはエボニックとフォワードエンジニアリングの合弁会社として2017年に設立されました。ミュンヘンに拠点を置く同社は、自動車メーカーに複合マトリックスシステムとコンサルティングサービスをサポートし、効率的な製造プロセスと軽量な自動車建設を支援しています。
免責事項
このプレスリリースに記載されている見通しや期待、または将来の予測に関する記述は、既知または未知のリスクと不確実性を含む可能性があります。実際の結果や発展は事業環境の変化により異なる場合があります。エボニック インダストリーズ AGはこのリリースに含まれる見通し、期待、記述に関して、更新の義務を負いません。